相続問題
相続人の範囲は、民法900条に規定があります。配偶者を起点として第1順位は子、第2順位は被相続人の直系尊属(父、母)、第3順位は被相続人の兄弟姉妹です。そして、民法896条で「相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する」と規定されておりますから、上記相続人に該当する当事者の方、とりわけ第1順位の相続人は被相続人の財産と債務の状況を確認しておく必要があります。なお、平成25年9月4日に子の相続に関する重要な判例が出ました。民法900条第4号は結婚していない男女間に生まれた子(婚外子、非嫡出子)の取り分を結婚した男女間の子(婚内子、嫡出子)の2分の1と定めておりますが、最高裁判所大法廷はこの規定を「法の下の平等を定めた憲法に違反する」と判断しました。
もし、被相続人に財産がなく債務があるということがわかったらどうすればいいでしょうか。その場合には、相続放棄の方法をお勧めします(民法915条以下)。相続人は「自己のために相続の開始があったことを知った時」から3か月以内に相続の放棄をしなければなりません。この3か月の期間のことを「熟慮期間」といいますが、この熟慮期間の起算点は必ずしも被相続人の死亡時を指すわけではなりません。被相続人の債務は死亡した時点ですでに分かっていることは稀であり、一般にはしばらくして相続人あるいは被相続人あてに債権者から連絡が来て初めて判明することが多いのです。相続放棄は被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申立をします。
また、財産も相続するが、それ以上に負債が多いという場合には、限定承認という方法もあります(民法915条、922条以下)。これは相続によって得た財産の範囲で被相続人の債務を支払うという処理方法です。相続財産を各債権者の債権額に応じて案分して分配し、その範囲で債務を支払います。3か月の熟慮期間の問題、家庭裁判所の管轄の問題は相続放棄の場合とまったく同様です。
熟慮期間内に放棄もしくは限定承認の手続を行わなかった場合には、被相続人の権利義務を単純承認したことになり、通常の相続手続を行うことになります。遺産分割につきましては相続人間の合意で自由に分割方法を定めることができますが、合意協議が整わない場合、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に遺産分割の調停を申し立てる方法がとられ、その場合には民法900条の法定相続分を前提として処理を行います。調停で決着がつかない場合には同じ家庭裁判所内で遺産分割の審判に移行することもあります。
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弁護士:石 鍋 毅
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