任意整理・過払金・個人再生・破産
借金が生じた原因はさまざまだと思いますが、これを解決する方法としては大別して ①任意整理 ②自己破産 ③個人再生の3つがあります。これらについて具体的に説明を加えていきます。このような借金問題の処理を一般に債務整理と呼びます。
依頼者が弁護士に債務整理をお願いするメリットは、これにより依頼者に対する借金の取り立てが止まることです。弁護士が事件の依頼を受け、委任契約を取り交わして、具体的な事件処理に入りますと、まず取りかかるのは、業者に対する受任通知書(債務整理開始通知)の発送です。受任通知発送後、業者が委任者に対して直接交渉を行うことは貸金業規制法21条の違反行為となります。弁護士にこの種案件を依頼してくる方々の多くは、支払期日に遅れ、業者から相当程度の督促を受けている状態でおり、業者からの督促がなくなることで精神的な負担が軽減されることになります。
もっとも、業者からの督促が止まっているという状態は、上記①②③の処理を行う前提に過ぎず、この状態だけで終了するわけではありません。
任意整理
任意整理とは、裁判所の力を借りずに、弁護士が業者と直接交渉し、一般的には一括もしくは分割で返済をしていく処理方法です。弁護士が事件に介入する際、業者に対して介入通知とともに債権調査票を送付し依頼者との取引履歴を開示してもらいます。弁護士は業者から開示された取引履歴を業者の主張する約定利率ではなく、法律で定められた利率に引き直して計算をします。実は業者から請求されている金額は約定利率を前提としているもので、弁護士は引き直し計算をすることで法律で定められた利率に従った各業者ごとの正確な債権額を把握し、依頼者の月々の返済可能額をベースに、各債権者ごとに返済計画案を作成していきます。業者との間で取り交わしていた契約上の約定利率は法定利率よりはるかに高利でした(法律(利息制限法)上は10万円未満まで年20%、10万円から100万円未満まで年18%、100万円以上で年15%、従来の約定利率の多くは年25%~29%)。業者との取引が長ければ長いほど、業者の主張する債権額と引き直し計算額は乖離していきます。年利29.2%の取引が5~6年続いた場合、引き直し計算により実際の務額はゼロになる確率が高くなることが日弁連の統計により示されています。
個人再生手続き
個人再生手続とは継続して収入を得られる見込みのある債務者が、5,000万円以下の債務について、裁判所の手続の中で、支払額を圧縮し、多くの債務を免除してもらう処理方法であり、小規模個人再生手続と給与所得者等再生手続の2つがあります。この処理方法のメリットは、支払額を圧縮できたうえで、住宅ローン返済中の不動産を従来通りの支払方法で別枠で支払っていくことができる(その結果不動産を手放さずに済む)点です。支払いをしなければならない最低弁済額は債務額や所有財産によって違いますが、おおよその目安としては再生債権額の20%程度です(小規模個人再生の場合。給与所得者等再生の場合支払額はもう少し多くなります)。ただし、再生債権(住宅債権特別条項の適用を申請する場合、住宅ローンは除かれます)が元本利息合わせて5,000万円を超える場合、個人再生手続ではなく一般民事再生手続の申立となり、裁判所に納める予納金の額( 1億までは300万円、個人再生の場合は2万円弱)等に大きな違いが出てきます。また、税金や社会保険料の滞納については、減額の対象にならず、分割であれ一括であれ再生手続と並行して支払いをしていかなければなりませんので注意が必要です。
自己破産
債務処理の最後の方法は自己破産です。破産により発生する不利益としては、破産手続に必要な範囲で資格制限を受ける、信用情報機関に登録され一定期間信用取引(ローンを組む、クレジットカードでの決済)ができなくなる、破産手続に必要な範囲で自由の制限を受ける場合がある、といった点です。よく言われる、住民票や戸籍に掲載される、あるいは選挙権がなくなる、といったことは一切ありません。
破産手続をとったこと自体で勤務している仕事に影響が出ることは通常はありませんが、ごく例外的に、保険会社・証券会社・警備会社に勤務している場合には支障が出ることはあります。
破産手続については、弁護士が申立をすると7日以内に裁判所から破産決定が下されます。その後約2か月先に集団審尋が行われ、その1か月後には免責決定が下されて、これにより債務を事実上帳消しにすることができます。
仮に、債務超過に至った原因が浪費(衝動買い・ギャンブル・風俗)など好ましくない内容である場合には免責不許可事由となるため、理屈の上では破産は認められても免責が認められない可能性があります。この場合には破産予納金として最低20万円上乗せされ、破産管財人をつけての処理となり、債権者集会が開かれるなど、手続としても大掛かりになります。ただし、このような手続で免責が許可されないということはほとんどなく、破産者による報告協力を前提に、破産管財人が裁量免責の意見をだし、これを裁判所が 認めるというケースが圧倒的です。
石鍋総合法律事務所
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弁護士:石 鍋 毅
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