今回は私が弁護士会で法律相談センターと共に委員会活動を行っている非弁護士取締の問題を取り上げます。

　一般の方には馴染みがないと思いますのでまず非弁について説明します。正確には非弁行為あるいは非弁活動といいますが、弁護士の資格を持たずに報酬を得る目的で弁護士法72条の行為を反復継続の意思を持って行うことを言います。簡単に言えば弁護士でない人が弁護士でないとできない業務を報酬を得る目的で継続して行うことをいうのです。非弁活動は弁護士でない人が対象になる点が特徴です。

東京三弁護士会には、非弁の疑いがあるとして事件性がある程度認められ、東京都内に管轄にある案件を弁護士会の担当委員会（東京弁護士会の場合は非弁護士取締委員会）として受理し、委員会の部会に配転していきます。

最近多い案件はNPO法人による不動産関係相続関係のアドバイス案件、あるいは関連他業種が絡む案件です。法律相談業務に類する業務を反復継続して行われているか、例えば紹介料あるいはコーディネート料などの名目で報酬（対価）とみられる金銭を受け取っているかが問題となります。

　関連他業種としては司法書士、行政書士が考えられます。司法書士については司法書士法第3条、行政書士については行政書士法第1条の２及び第1条の3に業務についての規定があります。司法書士法については大きな法改正があり、一定の要件を満たせば簡易裁判所での訴訟代理権が付与されるようになりました。しかしながら訴額140万円以上の事件を一部訴訟の形にして簡易裁判所に持ち込んだり、あるいは資格のある司法書士が事件を担当せず事務員を含めた無資格者が事件を処理しているケース（非弁ではなく非司問題）が問題となってきます。行政書士については官公庁への許認可手続の書類作成提出及びこれに絡む相談が業務の範囲とされているものの、実際には交通事故相談などこの範囲に含めていいものか微妙なものが案件として挙がってきます。現状は事案によって結論を異にしますが、今後日弁連と行政書士会との間で業務領域についての具体的な話し合いが必要になってくると思います。士業の職域をめぐるかなりデリケートな問題なので安易に結論は出しにくい状況です。弁護士法72条の解釈だけでは解決がつけられる状況ではなくなってきました。

　もっとも、実際に非弁の問題で多く存在すると思われるのは、債権回収を専門家ではなくその筋の人にお願いすることです。費用を払って（あるいは回収後に清算をする前提で）その筋の人にお願いをするということになると、これは立派な非弁行為になってしまいます。

　次に非弁提携の問題を説明します。これは弁護士が非弁業者と提携し、事件の処理を受けたり、弁護士名義を利用させたりすることで弁護士法27条に違反する行為となります。 具体的にどんなケースがあるかといいますと、弁護士は名義を貸しただけで一切仕事を行わず、業務は非弁業者が雇用する事務員がすべて行うというケースがあります。もう一つは、「債務を一本化します」との広告をみてやってきた多重債務者に「あなたに貸してくれる業者はいませんが、この弁護士なら力になってくれると思う」といって弁護士を紹介し、後日その弁護士から紹介料をもらうというケースがあります。

　非弁提携弁護士は非弁業者の関与により事件を大量に受任し、大量の預かり金等を集めますが、事務所が閉鎖された後に経理の状況を調べてみると、預かっていた金員のほとんどがなくなっていることが少なくありません。

　弁護士会では慎重に案件の処理を進め、相当程度の嫌疑が高まった段階で情報を公にします。　

　非弁提携弁護士に事件を依頼した方は、弁護士が業務停止になった結果、事件を放り出され事件処理が中断し、別の弁護士に一からお願いし直さければならないという痛手を受け、加えて預かり金として送金していた金員については、既に事務所の口座にはなく、返金を受けられないという二重の痛手を受けることが非常に多いのです。

　依頼をしていておかしいと感じたら、まずは依頼した弁護士と十分話し合い、それでも納得がいかなければ、依頼を打ち切る勇気が必要かもしれません。場合によっては他の弁護士にセカンドオピニオンを求めることも必要であると思います。